僕は
「それにしても法律事務所ってのは厄介なところだよな」


 つい本音が漏れ出てしまう。


 イソ弁の僕たちにとって、不満は言っちゃいけないかもしれないが、こういった酒席だとその手の話も出る。


「今夜はあたし、自宅マンションに戻るわ。食事済ませてから」


「そうしなよ。冷えるから、帰ったら温かいシャワーでも浴びてゆっくり眠って」


「ええ。……敬一は?」


「俺?俺は事務所に泊り込むよ。須山先生もずっと部屋におられるし」


「仕事ってそんなにたくさんあるの?」


「ああ。何せ誰かが引き受けないといけない弁護は絶対あるし、そういった意味では厳しい世界だよ。弁護士だけじゃなくて、検事とか裁判官なんかも含めた法曹界っていうのは」


「じゃあ、夜中までお仕事したらソファーで仮眠取るのね?」


「ああ。仕事は順調に進んでるし、弁護してくれって言う新たなクライアントもいるからな」

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