僕は
 この程度の法曹知識なら、検事や裁判官などになった人間たちも十分知っている。


 法律などは随時改正されるのだから、弁護人も知っておかないといけない。


 新しい法律の勉強の方が大事なのである。


 即戦術として。


 それに近年社会情勢が不安定で、強盗や放火、殺人などの凶悪事件も多い。


 そういったことをした容疑者として警察に捕まった人間を弁護するのが、須山や僕のように刑法を専門とする弁護士の仕事だ。


 確かに場合によっては、とんでもない人間を弁護しないといけないケースもある。


 数年前起きた都内での無差別殺傷事件の犯人など、明らかに犯罪者として連なっている人間たちも含めて、だ。


 そうなったときは、須山や他の先輩弁護士が引き受けるケースがある。


 僕自身、まだひよっ子だ。


 法律を知識として知っているのと、実際に活かすのじゃまるで違う。


 それがこの世界の実態だった。

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