僕は
 大学合格後、力試しで受けてみた司法試験はまぐれのような感じで通っている。


 やはり資格試験でも最高レベルのものなので、受かるとは思っていなかった。


 司法修習の後は幾分楽になったのが現実だ。


 合格までが大変なのが法曹界の一般的な型であり、それさえ踏んでおけば後はどのコースにでもほぼ自由に進める。


 僕もさすがに試験合格後、弁護士コースを選んで価値はあった。


 法律家の中でも弁護士が一番多くの報酬を受け取れるからである。


 実際、東都大時代から江美とは付き合っていて、互いに将来弁護士になる約束をしていたのだし、単に専門が違うだけで踏む手順は一緒だった。


 須山は来年四月、所長職に納まれば、これまで通り弁護士の仕事をするだろうか……?


 所長ともなれば、椅子に座っているだけで給料が出る。


 今の所長の鎌田もそうだ。


 須山が法律業務をこなしながら、同時に一度諦めていた小説家への道を進み始めると思っていた。


< 173 / 359 >

この作品をシェア

pagetop