僕は
「君はそんなこと、本気で思ってるのか?」


「いえ。ただ、先生が弁護士になる前は作家になりたかったと聞いたことがありましたから」


「それは老いの楽しみだよ。文学や文芸なんて、弁護人を辞めても出来る仕事だ。俺は今すぐそんなことをするつもりはない」


「そうですか……」


 意外だった。


 須山は所長になってからも、一介の弁護人として弁護士業務を続けるらしい。


 確かに男性の四十代は勢いがある。


 正直なところ、僕も見習いたいぐらいだ。


 ただ、そこの年齢にまで達していない以上、分からないことだらけである。


 一体自分が四十代に入ったらどうなるのだろうか……?


 今の須山を見ている限りでは意気軒昂に見える。


 何にも全く動じてないようだ。
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