僕は
 江美が手元にあったコーヒーを丸々一杯飲んでしまい、近くにいた店員に、


「もう一杯ホットでいいかしら?エスプレッソで」


 と言った。


「かしこまりました」


 持っていたトレイにカップを置いた女性店員は奥の厨房へと歩き出す。


 さすがにコーヒーショップはこの時間帯――つまり午後三時過ぎだが――、とても人が多い。


 店内は満席だった。


 僕もコーヒーを一杯注文した。


「君はてっきり商法ばかり知ってて、刑法はほとんど知らないのかなって思ってた」


「失礼ね。あたしだって、専門以外でも知ってるわよ。深くは知らないけど、サラッと一通りはね」


「今回の事件で、木崎さんが罪を擦(なす)り付けられた可能性が高いってこと?」


「そうね。刑事が書いたこの調書じゃ、警察は遺体の第一発見者を即殺人犯って決め付け
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