僕は
 まあ、僕も弁護士である以上、お茶代やお菓子代ぐらいは出せるのだが……。


 江美にまともな生活感覚がないのは事実だ。


 それは事務所にいる人間なら誰もが知っていた。


 美津濃さんは生活感がないな、と思っているようだ。


 やはり良家の育ちだから、小さい頃から金銭に恵まれていて、金に困ったことはほとんどないらしい。


 そういったことを直接彼女に言う人間はいない。


 それに名門で進学校である中高一貫校にいて、勉強できる環境に恵まれてきたので、東都大に合格するのもわけがなかったらしい。


 つまり江美は人生において逆風に晒されたことはないのだ。


 ずっと順調に歩んできつつある。


 だけど仮に彼女のような人間が何かにつまずいてしまったら、どうなるだろう……?
  

 もちろん僕自身、助けるつもりでいるのだが、果たして江美は抜け出せるだろうか……?


 複雑なものがあった。
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