僕は
 僕も江美も、そして須山や高階も第一審の結審の瞬間をテレビで見て安堵する。


 何の罪もない人間に容疑を擦り付け、人生を狂わせた罪は実に重い。


 それは極刑相当の方法でしか償えないものだった。


 おまけに仮に東京高裁で第二審が開かれ、一審同様証人を呼び質問等をして証拠を引き出したり、容疑を覆すような大きな証拠でも見つけない限り、逆転は難しい。


 これが刑事裁判の常だった。


 一審で死刑判決が出れば、二審でも同刑か、上手くいったとしても無期の禁固刑が科される。


 それが現実だ。


「……これで俺たちの仕事も一つ片付いたな」


 須山がテレビの中継で篠岡と中邑に下った一審の結果を見ながら、呟く。


「須山先生」


「どうした?」


「我々はこれでいいんでしょうか?」
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