僕は
 何も臆することはない。


 現に今日もクライアントが僕の部屋に来ている。


「是非園岡先生に頼みたい」と。


 僕もそういったクライアントを見捨てるわけにはいかないので会う。


 話を聞きながら、いろいろと考える。


 刑事事件の弁護は大変だ。


 それに僕自身、まだ半人前である。


 須山は順当に行けば、来年度からこの事務所の所長に納まるのだ。


 別にそれで口も利けなくなるとか、会えなくなるとかそういったことじゃない。


 ただ須山は妻子を亡くした苦労から、弁護士としての仕事が難しいものばかりで労苦が重なった挙句、今がある。
 

 つまり弁護士としても、それ以前に一人の人間としても、相当な苦労があったのだ。


 それは今の所長の鎌田も同様である。

 
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