僕は
 そう思って、掻き集めていた資料を読み続ける。


 少しでも被告人に対する心証がよくなるような類のものを揃えて。


 今度の事件は容疑が放火だった。


 何かと空気が乾燥している時季なら、こういった事件も珍しくない。


 仕事の合間に江美にメールを打ったことがあった。


 <今度の事件の弁護は俺一人でやってみるから>という趣旨のものを。


 送信し終わって、また関係資料を読む。


 年々刑事事件は凶悪化しつつある。


 まるで時代を映すかのように。


 そして僕はずっと仕事漬けの毎日を送っていた。


 朝から晩までいろんな資料を読みながら、今回の放火犯に酌量の余地があるような証拠を揃えるために。


 新年度からは<須山所長・高階副所長>体制となることがほぼ決まっていた。
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