僕は
 こういった緊張感というのが刑事事件を担当する弁護人特有のものであることは間違いない。


 弁護士は大変な仕事である。


 警察や検察が取り調べ、起訴までされた人間に少しでも酌量の余地があって、量刑が軽くなるような判断をさせるのが任務だからだ。


 とても責任があるのだった。


 もちろん取っている給料は多いのだが、それに匹敵するぐらいの仕事量がある。


 今回の事件は長丁場となりそうだった。


 放火の嫌疑が掛けられた男性も、容疑を全面的に否認している。


 こういった弁護が一番大変なのだった。


 下手すると、篠岡幸子や中邑靖志が行なった寺田充殺しなどよりも。


 殺人犯は無期懲役や死刑など、重い量刑が科される分、あっという間に裁判が終わってしまう。


 日本の司法制度が根本的に問われかねない、何よりの証拠だったが……。
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