僕は
 確かに殺人事件の弁護は難しい。


 須山も木崎朱莉に嫌疑が掛けられた寺田殺しでは徹底して調書を読んでいる。


 これが実態なのだった。


 いわゆる刑事の書いた員面調書の裏を暴くという離れ業が。


 こういった手段は、単なる読解力じゃ身に付かない。


 場数を踏むことが必要だった。


 いわゆる経験即である。


 僕や江美ぐらいの年齢じゃ無理かもしれない。


 ただ須山は今回の件では、一人でやれと言ってきた。


 やるしかないだろう。


 まずは慎重に調書を読み、矛盾点を一つずつ洗い出していく。


 地味だが、こういった作業が一番難しい。


 大抵の弁護士はここで投げ出す可能性があるのだし。
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