僕は
　ちゃんと理由があるのだ。


　あの手の発火装置に必要量の火薬や時限式のタイマーを仕掛けられるのは、野川ぐらいの玄人しかいない。


　山井さんが機械などに疎いことは、すでに数回の接見で聞いている。


　やはり野川がやったと見て間違いなさそうだった。


　現場に犯人の指紋など物証が残されていれば、それを手掛かりに警察も動き出すだろう。


　捜査本部が解散されていることは残念だったが、再捜査となればまた立ち上げられる。


　それに僕たち弁護人側も警察が山井さんを不当逮捕した可能性があるとして、もう一度捜査のし直しを申し立てることも出来た。


　いわゆる罪状への異議申し立てである。


　それが可能となれば、警察官たちが動き出す。


　現場が新宿歌舞伎町の繁華街であったことから、再捜査となれば所轄の新宿中央署が対応する。


　刑事たちも安易に山井さんを逮捕してしまったことが、仇となると思っているようだ。
< 232 / 359 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop