僕は

「警察はまだ野川を引っ張ってないわ。行方晦ませてるから」


「そう。だけど捕まるのは時間の問題だろうな。俺は別に警察に探り入れたりしないけど」


「それがいいわ。敬一は目の前のことに集中して。やることはいくらでもあるでしょ？」


「ああ。仮に野川が放火容疑で逮捕されたら、そいつの弁護を誰が引き受けるか、見ものだな」


「そうね。あたしもそう思ってた」


　江美が俯き加減で軽く息をつき、次の瞬間、顔を上げて、


「旅行はしばらくお預けかしら？」


　と問うてくる。


「ああ。そうなるね。俺もこの裁判が収束するまでは暇がない」


「じゃあ、あたしも専門の勉強に精を出すから」


「それがいいよ。君だって時間活かしたいだろ？商法だって一部の法律は変わってるんだし」


「そうよ。高階先生も結構きつい感じで言ってこられるから。ちゃんと勉強しなさいよっ