僕は
 こういった言い方をすると悪いのだが、川谷が弁護して敗訴したとしても、泥を被るのはそっちの方だ。


 別に新宿ロイヤルローオフィスの人間たちに影響することはないし、同業者同士での風評被害等もない。


 原告・被告両方とも遣り合いが続く。


 そして二月半ば、第一審が結審した。


 裁判官に補充裁判員まで含めた九人で協議し、判決が言い渡される。


 誰もが判事の読み上げる罪状を固唾を呑んで聞こうと耳を澄ませた。


 僕も録音機を稼動させたまま、証言を取り続ける。


「主文」と言う声が聞こえてきたとき、判事の方に一斉に視線が行く。


 そして罪状の朗読が始まる。


 予想していた通りの判決が下された。


 裁判というものの場数をあまり踏んでない僕にとっても、全くの畑違いの江美から見ても。
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