僕は
 と呟く。


 その後、廷内は静かになった。


 マスコミの人間たちが一斉に裁判所の外へと行き、野川に死刑判決が出たことを告げる。


 あっという間に世間に野川の第一審の結果が伝わった。


 僕たち傍聴席に座っていた弁護人も立ち上がって廷外へと出、歩き出す。


 時折雨が混じることもあるのだが、少し温かい。


 冬もそろそろ終わりかと思われた。


 結果として川谷が即日控訴することで、裁判の場は東京高裁へと移る。 


 だけど弁護人がよほど第一審の死刑判決を覆すような新証拠でも入手しない限り、裁判は難しいだろう。


 どう考えても、野川に酌量の余地はない。


 放火が結果として殺人に結び付いたからだ。


 次に川谷はどんな顔をして、高裁の法廷に来るだろうか……?
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