僕は
やってビル内に発火装置を仕掛け、建物を焼き払ったかだった。


 僕たち弁護士もそこが知りたい。


 野川の犯行の事実の真偽は果たして法廷内で立証されるのか……?


 被告側はおろか、原告側も身構えていた。


 控訴審は今月末から、新たに証人調べなどが実施される。


 それまではどちらも相手方の行方を見定めるつもりでいた。


 ただ言えるのは、野川がビル放火に便乗して大量殺人を行なったのに間違いはなく、かなり厳しい罰が下るものと思われる。


 そういったことは裁判に臨むどちらも承知しているのだった。


 僕も第二審が始まる前に一度、今回の裁判で原告側に立つ検事と会った。


 高山という検察官だ。


 上下ともスーツを着て、髪をスタイリング剤で整髪し、いかにも堅気の格好をしている。


 やはり検事は刑事と同じで緊張感を伴う職業なのだろう。

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