僕は
「ええ、ちょっとね。……でも大丈夫よ。弁護士なんていくらでも疲れが溜まる職業なんだから」


「そう?俺が考えすぎてるのかな?」


「そうよ。気にしなくていいわ。長い人生、苦難はいくらでもあるんだし」


 彼女はそう言って笑い飛ばす。


 さすがにお嬢様育ちでも、社会に出てから荒波に揉まれているようで、神経は普通の人間以上に強い。


 それに僕たちは半ばお互い将来を約束し合っている仲だ。


 二歳差で、ほとんど年齢の開きはない。


 だから、僕もいざとなれば江美を妻にする用意があった。


 結婚というものを真剣に考えたことはなかったが、するとなると決断が必要だ。


 基礎的な人間関係は出来ているので、彼女と一緒になる気はあったし、おそらく今の状態の延長線上で家庭が出来ると思う。


 何も女性ばかりが優越するわけじゃない。
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