僕は
 私立大学の学生は比較的裕福な人間たちが多かったのだが、国立大学はそうは行かない。


 確かに都内の名門進学校から、僕の四年いた東都大に進学してきた人間も大勢いる。


 そういった人間たちの中に紛れ込むようにして、地方出身の僕もいた。


 九州の田舎町から上京してきて、右も左も分からないまま、東都大のキャンパスの正門を潜(くぐ)り抜けるのは相当な違和感があるだろう。


 だけど学費を支払っていた分、四年間しっかりと勉強した。


 僕のようなケースは稀なのである。


 本来なら、九州の国立大学で一番レベルの高い、九麗大(きゅうれいだい)の法学部を受けないかと両親からは勧められていたのだが、あえて東都大法学部を受けた。


 三月の高校の卒業式の二日後に、郵送で届いた合格通知をもらってから、上京の準備をし始める。


 東京という場所は実に広すぎた。


 今から十年以上前に地方から来た人間にとっては。


 今でこそ、電車や地下鉄などは簡単に乗り換え出来るが、やはり当時は地理を知らな過ぎた。
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