僕は
 優秀な弁護士は巷に大勢いる。


 その手の人間たちを引き抜いてきて、自分の事務所の職員に据えるのだ。


 それで十分回っていく。 


 業務と言っても単にずっと与えられた資料や書類などを読み込み、法廷で検事と戦う。


 検察官も弁護人と争うのに慣れていた。


 珍しく東京地検の高山検事とは親しくしていたのだが……。


 考えてみれば、高山も僕もこれからの法曹界を担っていくのだ。


 それは十分分かっていた。


 だからあえて個人的に情報交換などをしている。


 電話やメールなどを通じて。


 互いに午後九時過ぎなど、普通のサラリーマンが帰宅していてもおかしくない時間帯に連絡を取り合う。


 現にその時間帯にデスクの固定電話が鳴り始めれば、高山からだと思っていた。
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