僕は
第52章
     52
 森林公園で生温い南風に吹かれながら、僕たちは寛いでいた。


 眼下の島の景色は実に綺麗だ。


 ベンチから立ち上がり、安全のため設置されているフェンスの手前まで行く。


 そして美しい光景を見続けた。


 深呼吸して、新鮮な酸素を肺に入れる。


 また日本に戻れば仕事があるのだし、四月からは雑用だけでなく、新米弁護士たちへの教育もあった。


 僕も入所したての頃は須山に教育されていたのだし、その須山が新年度からは所長になる。


 江美も商法関係の訴訟が増えているので、仕事は手一杯のようだった。


 だけど互いに同じ事務所で働いているのだ。


 業務はきついのだが、慣れればそうでもなくなる。


 それにどのような訴訟に関しても、裁判所がある以上、ずっと続いているのだった。
< 346 / 359 >

この作品をシェア

pagetop