僕は
ない。


 健全な付き合い方だった。


 まあ、僕たちぐらいの年代になると、結婚を意識するのが普通だったが……。


 だけど独身で楽しいこともある。


 ゆっくりと手を携え合い、恋人同士として歩き続けるつもりでいた。


 遠慮は要らないだろう。


 ちょうど江美のマンションのすぐ近くに公園があり、そこにも桜が咲いている。


 花見にと思い、近くのコンビニで買った弁当を持って公園まで行き、開花して盛りを迎えた花をずっと見つめていた。


 この桜もすぐに散ってしまう。


 でも僕たちの間にある愛情は冷めない。


 互いに結婚してもいいかなと思っていたからだ。


 僕自身、咲き誇ったピンク色の花をじっと見つめていた。
< 355 / 359 >

この作品をシェア

pagetop