僕は
 目の奥に焼き付けるように。


 すると不意に江美が自分の唇を僕のそれにそっと重ね合わせてきた。


 口唇同士が接近し合う。


 ゆっくりとキスを繰り返した。


 とても密で甘い口付けだ。


 何度も何度も繰り返し。


 他人が見ていてもいい。


 僕たちはまるで人目を憚らずに、ずっと口付け合った。
 

 時が過ぎ去っていくのを感じ取りながらも、キスが続く。


 ちょうど弁当を食べ終わり、ミント系の香りがするガムを噛んだ後で、ハッカの匂いが漏れ出ていた。


 キスしながら佇む。


 公園の中には目立った人がいなくて、口付け合うにはちょうどよかった。
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