僕は
 まぶたが重たくなるのは感じ取れた。


 この季節が過ぎ去れば、また暑い夏がやってくる。


 僕も江美も、いつまでも初心を忘れずにいようと思った。


 弁護士として、そしてこの広い世界で巡り合えた人間同士として。


 花も徐々に散っていく。


 風に乗って。


 冬から春への季節の変わり目が十分感じ取れた。


 さっき交わしたキスの感触はまだ唇に残っている。


 少し甘い類の香りも僕の口唇に付いたまま、まだ幾分残っていて、これが江美の香りだと分かった。


 暖気は絶えない。


 まるで眠ってしまうかのようにずっと傍にいて、離れなかった。


 普段の業務のことなど、まるで忘れてしまう。
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