僕は
 と言った。


「検察官の異議申し立てを却下します。弁護人は質問を続けてください」


 須山が軽く一つ咳をして、


「改めて本件に関し、青鹿さんにお伺いをいたしますが、篠岡幸子という女性をご存知でしょうか?」


 と訊いた。


「ええ。かなりの額の借金を背負わされた人間だということは風聞で聞いて知ってます」


「その篠岡が本件を利用して寺田充氏を殺害し、闇に葬ったというのは十分根拠のあることですよね?」


「異議あり!この場において、捏造されたような証拠を引き出すことは証人調べ段階で違法性があります。裁判記録からの削除を願います」


「検察官の異議申し立てを再び却下します。弁護人は証人に対し、調べを続けてください」


 能島の申し立ては二度とも却下された。


 どうやら弁護側に有利な形で、証人調べが進みつつある。

< 57 / 359 >

この作品をシェア

pagetop