僕は
 裁判長と左右両方の陪審、それに裁判員六名が見守る中で、証人調べは続けられた。


 法廷で改めて篠岡幸子という女性の存在が浮き彫りとなる。


 被害者との接点が抱え込まされた借金だったとすれば、怨恨や金銭の強奪などの動機があり、ほぼ間違いなかった。


 非力な篠岡が殴る手段として、おそらく置物かハンマーなどの頑丈な凶器を使ってやった線が一番濃い。


 後頭部の殴打痕が被害者にとっては致命傷となったらしい。


 監察医の解剖所見通り、被害者は被疑者によって後頭部を殴打され、挙句殺害されてあの部屋に遺棄された。


 事前の計画通り、有力な被疑者である篠岡があの部屋で被害者と揉み合い、被害者を殺害した。


 そして殺害後ケータイ電話を使い、木崎を呼び出して、第一発見者である彼女がさも犯人であるかのように仕立て上げたというわけだ。


 これは重罪である。


 取調べ室内における警察官の自白の強要も裁判が進むにつれ、明らかとなった。

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