僕は
 木崎の裁判は僕と須山が担当弁護人だったし、今回の裁判を通じて、刑法をより深く掘り下げて勉強してみようと思っている。


 単に本や関連文献などに書いてある分だけじゃなくて。


 弁護士はどんなに給料が高い人間でも、仮に安月給でも先生商売だ。


 先生と呼ばれるからには、一度弁護を引き受ければ、相当なプレッシャーが掛かる。


 それだけ難しい。


 僕は東都大時代、剣道部にいた。


 夏の暑いときは道場が地獄となっていたのを未だに記憶している。


 今から十年以上前で、剣道場にはエアコンなど付いてなかった。


 僕も他の部員たちも暑さに蒸されながら、練習に励んでいた。


 腕前こそよくなくて、やっと二段まで行ったのだが、そういった肉体や精神の鍛錬があったからこそ今がある。


 弁護する人間は体力勝負の面ももちろんあるからだ。


 江美は硬式テニス部で、今でこそ滅多にラケットを握らないが、学生時代は二の腕に筋
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