僕は
 と呟く。


 木崎朱莉は冤罪事件の犠牲者として、第一審の結審直後、新聞やテレビなどで派手に報道された。


 木崎本人はホッとしたようで、弁護を担当した須山や僕に何度も頭を下げ続ける。


 そして能島検事が即日東京高裁に控訴したことで、裁判は第二審が始まりそうだ。


 でも裁判において一番有力なものは第一審で、よほど新証拠などが出ない限り第二審での逆転は難しい。


 僕たちはしばらく検察側の出方を見ていた。


 能島は年齢の割には血の気がある。


 何としてでも木崎朱莉を犯人に仕立て上げたいようだった。


 執着心が強いのも、この手の検事の特徴だろうと思う。


 第一審が終わって二日後の夜、食事会があった。


 一応第一審が結審したことで、須山が木崎や僕、それに江美を食事に誘ったのだ。


「乾杯」
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