僕は
第14章
     14
 その日、店が閉まる午後十時半ぐらいまで食事会は続いた。


 四人で揃って店を出ると、須山が、


「園岡、君が美津濃弁護士を送っていきなさい。年頃の女性が一人で夜道を歩くと危ないし。代わりに俺が木崎さんを送っていくから」


 と言い、木崎を連れて歩き出す。


 木崎朱莉は控訴審こそあるが、落ち着いていた。


 能島検事がよほどの新証拠を出さない限り、木崎は罪に問われないからだ。


 一審で無罪判決が言い渡されている以上、控訴審、上告審など、この一件の裁判が長期化するとは考えにくい。


 それにあくまで木崎を弁護するのが僕たちの仕事だ。


 そのために須山を始め、事務所に詰めている刑法専門の弁護士たちは頑張り続けているのだから……。


 南青山から六本木まで歩いてものの数分だ。


 辺りは若者の街らしく、各所にネオンが灯り、江美と夜の街を歩きながら空を見上げる。
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