僕は
 弁護士は激務だ。


 仮に裁判が終わったとしても、検察官が控訴・上告をすれば心身に相当な疲労を伴う。


 おそらく木崎朱莉は殺人の容疑を掛けられて、散々な想いをしたのだろう。


 それは弁護に直接関わってない江美でも分かっているようだった。


 あの法廷にいたとき、僕は傍聴席の彼女をチラチラと見ていたし、実際心配そうな顔をしていたのを脳裏に焼き付けている。


 やはり弁護士で専門こそ違うにしても、江美は刑事裁判に関心があるようだ。


 商法だと、横領や背任など企業犯罪が主流となる。


 その手の弁護は警察などでも、組織犯罪対策部――通称組対――の刑事と交渉するのが普通だ。


 警視庁にも組対五課と呼ばれる、組織犯罪を取り扱う部署がある。


 江美もよく警視庁に電話やメールで問い合わせをしたり、場合によってはそこの部署にいる刑事と会うことがあるようだ。


 別に不自然でも何でもない。

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