僕は
「送ってくれてありがとう。お休み」


 江美が頷き、エントランスフロアに入るため暗証番号を押す。


 そして屋内へと入っていった。


 街でも目抜き通りに出て、タクシーを一台拾う。


 新宿の自宅マンションの住所を告げて、後部座席に凭(もた)れ掛かった。


 さすがに食事会の後でも、高級料理のフルコースをご馳走してもらった後なので、疲れる。


 だけどまた明日から仕事だ。


 能島が控訴したことでいずれは第二審が始まる。


 木崎を守り抜くのが、僕や須山の仕事だった。


 須山も控訴審に関しては、すでに手を打ってると思う。


 翌朝、午前九時に出勤してくると、ガラス張りになった個室内で須山はすでに仕事をしていた。


 ドアをノックすると、中から「はい」という声が聞こえて、
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