僕は
「ああ、君か。朝から何か用かい?」


 と訊いてくる。


「木崎朱莉に対する検察の控訴審に関してですが」


「ああ。それなら今、証拠を整理してるところだった。もう一回、刑事の書いた員面調書と第一審の裁判記録を読み直してる。それで大丈夫だろ?」


「さすがにやり手は違いますね。僕は須山先生が余裕をお持ちで、手を抜いておられるの
かなって思ってまして」
 

 須山が一転目付きを変え、言った。


「人を助けるのが弁護士の仕事だ。そのことを忘れるなよ」


「はい」


 気分が引き締まったところで退室して、自分の個室へと向かい、出入り口で必要な情報を入力して入室する。
 

 コーヒーを淹れる前にパソコンの電源ボタンを押し、立ち上げた。


 そしてマシーンが立ち上がると、須山同様、事件当時書かれた員面調書と第一審の裁判記録を閲覧する。
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