僕は
第15章
     15
「事件現場のベッドのシーツには、木崎さんに罪を着せた人間の指紋が付いてた」


「あの員面調書に書いてあった篠岡幸子って女のもの?」


「ああ。被害者の寺田さんとの接点は抱え込まされた借金だった可能性が極めて高い」


「篠岡が寺田さんを殺害するにしても、怨恨や金銭の強奪なんかで動機は十分あるからね」


「俺もそう思う。おそらく篠岡は単独もしくは二人ないし三人ぐらいの人間で寺田さんを殺害し、あのホテルの一室に死体を遺棄して、木崎さんを現場に呼び出し、罪を着せたものと考えられるな」


「それは敬一の推理もいくらか入ってるんでしょう?」


「うん。……だけどね、考えてみれば篠岡にも共犯者がいたってことだよ。誰か寺田さんを殺害できるような腕力と体力を持ち合わせた男性がね」


「現場に篠岡以外の人間の指紋が残されてたのは知ってる?」


「えっ?それは初めて聞くことなんだけど」


「中邑(なかむら)靖志(やすし)。寺田さんのブレーンで、かなりお金に困ってたみたいで、闇金とかいろんなところから借金してたって記述があったわ」


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