僕は
たよ。DNA鑑定と再捜査ですけど」

 
 と言う。


 ――そうですか。うちの事務所の人間で間違いありませんね?


「ええ。新宿ロイヤルローオフィスの弁護士の須山一夫ですって仰ってましたから」


 ――分かりました。では。


 電話を切った後、軽く息をつき、


「さすがに須山先生は手回しが早いな。俺たちが警視庁の鑑識課に頼む前に手を打ったらしい」


 と言って、またパソコンのディスプレイに目を向ける。


 その日は丸一日、事務所内で調書の再読と、新たに関係先から取り寄せていた資料を読み続けた。


 江美は僕が作業に入るとすぐに退室する。


 捜査線上に新たな人間が浮上してきたのは意外だった。


 中邑が金に困っていたことから寺田さんを殺害し、金品などを強奪した可能性は極めて
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