僕は
 それらを全てフラッシュメモリに取り込み、裁判が始まるのを待つ。


 東京高裁での控訴審は証人調べがまず執り行われる。


 それが十一月末だった。


 第一回の証人調べが済めば、次は十二月上旬に第二回の証人調べと第二審の結審となる。


 もちろん能島検事はまた新証拠を提示しようとするだろう。


 だけど僕たち弁護側の入手した証拠は決して木崎を殺人犯にさせないためのものだった。


 中邑が殺人の実行犯だと見てほぼ間違いない。


 それが把握できたので、何ら迷うことはなかった。


 あの日、寺田を殺害してホテルに死体を遺棄したのは、篠岡と中邑の共謀によるものだと判断される。


 事件の全貌が見えてきつつあった。


 まあ、これがこの事件において隠されていた真相だと分かり掛けてはいたのだが……。
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