双華姫~王の寵姫~
那智が窓を開ければ、笑顔の少し硬い・・・龍がそこにはいた。



「やはり龍か・・・・・窓の叩き方があの頃のままだった」



那智がそう声をかければ、那智は龍の腕に抱きしめられる。



「・・・・那智・・・会いたかった」




妾も会いたかった・・・そう言えたら良かったのに。



それはもう言えない。



那智と龍の道は・・・・もう交わる事がないのだから。



「龍・・・ここは危険じゃ・・・・早く逃げろ」



愛の言葉を交わす事はもうできない。


那智に言える言葉はいますぐここから逃げろだけだった。



「那智・・・・?」


腕の中にいるのは・・・確かに龍の愛した那智だったが・・・龍の愛した笑顔は那智の顔にはない。

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