双華姫~王の寵姫~
那智が一歩下がれば、志高が一歩近づく。


更に那智が一歩下がれば、志高が更に一歩近づく。


その距離は縮まる事もなければ・・・広がる事もない。 


-ガタ-


那智の後ろには・・・寝床しかなかった。



那智の本能が危険だと・・・・今の志高は危険だと告げている。



「もう逃げないのか?」


志高がそう問えば、那智の顔が恐怖に歪む。


「・・・・・志高様・・・・・?」



恐ろしいものを見るように那智は志高を見上げている。



「那智華は・・・私の正妃だったな?」



何故今・・・それを確認されるのだろうと思いながらも頷けば、志高に抱きしめられる。



「だったら・・・私が那智を抱いても・・・文句はないよな?」



那智を絶望に落とすには十分な言葉だった。
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