双華姫~王の寵姫~
宴が終わり・・・皆自分の領地へと帰って行った。


那智の父と兄も・・・龍も・・・・皆それぞれに想いを抱きつつ・・・帰って行ったのだ。



そして後宮では・・・一つの華が輝きを失っていた。


前から人形のようだった那智の為、その変化に気付く者は美沙しかいなかったが。



「那智姫様・・・・?今日も外にはお出にならないのですか?」



美沙が那智に声をかけるが・・・那智は何も反応を返さない。


あの日・・・美沙が那智を置いて行った日・・・那智の身に何が起きたのかは、聞かなくても分かった。



那智から笑顔が消えたから・・・。



美沙は自分の弱さを呪いつつ・・・那智に声をかけ続ける。



「那智姫様・・・・?せめてご飯くらいは食べて下さりませ・・・・」



ほとんど食べられていないご飯を見ながら、那智に持って行けば・・・・それを那智は一瞥すると床に入ってしまう。



「具合でも・・・・」



返事が返ってこないと分かっていても、美沙は声をかけ続ける。



那智からは・・・やはり返事がなかった。



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