双華姫~王の寵姫~
那智が故郷に帰る朝・・・志高は見送りには来なかった。


後宮の女官たちに「早く帰ってきてくださいね?」と言われながら、那智は旅路へと着いたのだ。





「那智姫様・・・那智の川が見えてきましたよ!!」


美沙は久しぶりに見る那智の川に目を見張る。



那智の顔も心なしか・・・明るいような気がした。


王から那智を故郷に戻すと聞いた時は、驚いたが・・・・安心もした。


故郷には柚那がいる。


那智も柚那の隣にいれば笑顔を取り戻すだろうと・・・・。


柚那にしか・・・もう那智は戻せないような気もしている。



柚那で無理だったなら・・・那智はもう戻らない。




美沙が不安に襲われそうになった時・・・従者が有栖川本家に着いたと知らせてくれた。




外には・・・・今か今かと待ち続ける・・・柚那がいる。



「那智お帰りなさい!!!」



そう言って那智を迎えれば・・・・柚那の顔が曇った。
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