双華姫~王の寵姫~
柚那は那智に何と伝えようか迷っていた。



どう言っても・・・那智を傷つけるとしか思えない。



しかし・・・黙っているわけにも行かなかった。柚那だって覚悟を決めてここまで来たのだから。




「その兄君様が・・・元気になったそうよ」




那智の目が一瞬大きく開かれたが・・・・すぐに下を向いてしまう。




(・・・・どういう事・・・?起き上がるのもやっとだと・・・言っていたはずなのに・・・元気になるなんて・・・)




噂が全て真実だとは思わない。




けれど嘘ばかりでもないはずだ。




志高からも具合が良いと聞いた事はない。




那智はそこで気が付いた。




(ちょっと待って・・・兄君様が元気になったという事は・・・・)



ハッとしたように上を向けば・・・柚那の悲しい色を宿した瞳と目が合う。




そういう事だった。

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