双華姫~王の寵姫~
「妾は・・・妾の意志で・・・・志高様の元に戻る」



もう柚那が何を言っても那智は変わらないと・・・・柚那は悟る。



いつだって一回言い出したらこの妹姫は聞かないのだ。



誰の言う事も聞かず、自分の意志と足で歩いて行く。




柚那の知っている那智はそういう妹だった。




「死ぬかもしれないのよ?」




最後にもう一度だけ聞けば、那智は有栖川家に帰って来てから一番の笑顔で柚那を振り返り言い切る。




「殺しに来た奴を殺してやるわ。そして死ぬ時は笑顔で逝ってやる」




最後の一瞬まで、この妹姫は輝いて・・・逝くのだろう・・・柚那はそう確信した。




「分かった。屋敷から出るのを協力すれば良いの?」



そう言ってやれば、那智の顔に泣きそうな笑顔がこぼれる。




その笑顔がまるで「さようなら」と言っているようで、柚那は止めたくなる気持ちを必死に押し隠した。
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