双華姫~王の寵姫~
入ってきた志高を那智は睨みつける。



「妾は疲れているのじゃ・・・帰れ」



最近ではもう敬語すら使わない那智に、志高は溜息がもれる。



「お前は・・・・相変わらずだな。夫が来た時くらい笑顔で迎えろ」



言い方はお互い様なのだが・・・・それを突っ込む者はいない。



美沙は「あとはお二人で」と入って来た女官を連れ、早々に出て行った。




「笑顔は品切れ中なのじゃ・・・・もう疲れて・・・力がでない」



某アンパンのヒーローみたいな事を那智は真顔で言っている。



志高は頭を押さえながら・・・それでも那智に近付いてくる。



「もうこの後宮には那智しかおらん。だから・・・諦めろ」



他の姫達は後宮を自ら去った事もあり、あの後戻ってきたが・・・・志高に追い返された。



その時那智を睨む顔に、思わず寒気がした。




「それは・・・・そうですが・・・・」



帰って来てから・・・こんな風に二人過ごすのは初めてだった。
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