双華姫~王の寵姫~
あの宴の夜と同じように志高は一歩那智に近付く。那智も同じように一歩下がる。



しかし・・・あの時とは違う。


床にたどり着く前に、那智は立ち止まった。



「志高様・・・・」


そう那智が言えば、志高も那智を見る。



「兄君様・・・今頃は天の国につきましたかしら?」



あの後、那智と志高二人だけで兄君様を見送った。



志高がそれを望んだためだ。



「・・・・・今頃は楽しく過ごされてるといいですね?」



那智が微笑めば、志高は泣きそうになる。



那智と柚那のように・・・自分たちはお互いをもう一人の自分だと思った事はない。



一緒に過ごしたことも・・・ほんのわずかだった。



しかし・・・優しかった兄。



だからあの日・・・・兄がそう願うなら・・・・とどこかで思ってしまったのだ。
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