双華姫~王の寵姫~
「あの日・・・・梅の木の下で死ぬのも悪くないと・・・」



そう思ってしまったのだ。



那智の想い出を胸に・・・死ぬのも悪くないと。


それを聞き、那智は呆れたような顔になる。



「妾の好きな梅の木の下で死ぬのは辞めてほしいですね?迷惑です」



どこまでも我が道を行く那智である。



「それに・・・・できる限り生き残ろうと・・・約束したはずでしょ?」



頭をポンと叩くと、那智は志高を抱きしめた。



「志高様に死なれたら・・・・妾はこの若さで未亡人・・・。引く手あまただぞ?」




再婚してはいけないという法はない。




志高の顔が面白くなさそうに歪む。




「那智華は・・・・私が死んだら、さっさと再婚するのか?」





それはないと知っていながらも・・・・最近は那智の手の上で踊らされている気がする。




那智はふふふと笑うと、志高を那智の方に向かせた。



「しませんよ。志高様だけを思って・・・生きて行ってあげます・・・恐らく」




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