双華姫~王の寵姫~
この場所で安らぎを求める方が馬鹿なのだ。




王が改めて思っていると、遠くから琴の音と歌声が聞こえてくる。




後宮には似つかわしくない優しい音色に、知らず知らず王の足はそちらに向かう。





歩いている間も琴の音と歌声は優しく王のもとに届く。





音色を頼りにたどり着いた場所は、あまり訪れる事のない梅の花が植えられている場所だった。





梅の花の時期なのか、そこら中に梅の花が咲き誇り存在を主張している。




奏でている者に気づかれぬよう、梅の木の間から覗くと、そこには梅の木に保たれるように座る那智の姿があった。





那智は泣いていた。





泣きながら琴を奏でるその姿は壮絶なまでに美しく、王は目が離せなかった。

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