双華姫~王の寵姫~
時間は王が紗里を訪れている時に少し戻る。
その時那智はとても暇だった。
美沙を下がらせたは良いが、妾は暇すぎるぞ!誰に怒るでもなく、暇な時間に弄ばれている。
暇で部屋を歩き回り、疲れたのでお茶を飲んでいると、今日もらったばかりの柚那の文を思い出す。
《梅の花が見頃ですね。
梅の花が咲くと、梅の木の下で那智は琴を私は笛を奏でたのを思い出します。
那智の琴と歌声を今年は聞けない事がとても残念です。》
毎年この季節は二人の演奏会が行われた。演奏会と言っても身内と本当に親しい人だけを呼んだものだったが、那智と柚那はとても楽しみにしていた。
柚那の文に少しだけ涙が溢れてくる。
那智にとっても柚那と奏でる時間はとても大切なもので、今年も同じように訪れると思っていたものだった。
変わらない事などないのに…
那智は溢れてくる想いを止める事ができず、美沙から聞いた後宮の梅の花が咲き誇る場所に琴を持ち走った。
結構な重さと大きさの琴だが、腕力のある那智にとっては簡単な事だった。
琴を持ち走る姿を誰にも見られなかったのも那智の強運の証だろう。
梅の木が立ち並ぶその場所は少しだけ故郷に似ていた。それがまた那智を悲しくさせる。
同じように梅は咲くのに、共に過ごした人達はここにはいない。
強く生きなさいと父は言った。けれど今だけは少しだけ弱くなる事を許してほしいと願う。
後宮に入り、王の訪れも初日だけ、来るのは有栖川に取り入ろうとするものや、毒の贈り物に刺客達。
その時那智はとても暇だった。
美沙を下がらせたは良いが、妾は暇すぎるぞ!誰に怒るでもなく、暇な時間に弄ばれている。
暇で部屋を歩き回り、疲れたのでお茶を飲んでいると、今日もらったばかりの柚那の文を思い出す。
《梅の花が見頃ですね。
梅の花が咲くと、梅の木の下で那智は琴を私は笛を奏でたのを思い出します。
那智の琴と歌声を今年は聞けない事がとても残念です。》
毎年この季節は二人の演奏会が行われた。演奏会と言っても身内と本当に親しい人だけを呼んだものだったが、那智と柚那はとても楽しみにしていた。
柚那の文に少しだけ涙が溢れてくる。
那智にとっても柚那と奏でる時間はとても大切なもので、今年も同じように訪れると思っていたものだった。
変わらない事などないのに…
那智は溢れてくる想いを止める事ができず、美沙から聞いた後宮の梅の花が咲き誇る場所に琴を持ち走った。
結構な重さと大きさの琴だが、腕力のある那智にとっては簡単な事だった。
琴を持ち走る姿を誰にも見られなかったのも那智の強運の証だろう。
梅の木が立ち並ぶその場所は少しだけ故郷に似ていた。それがまた那智を悲しくさせる。
同じように梅は咲くのに、共に過ごした人達はここにはいない。
強く生きなさいと父は言った。けれど今だけは少しだけ弱くなる事を許してほしいと願う。
後宮に入り、王の訪れも初日だけ、来るのは有栖川に取り入ろうとするものや、毒の贈り物に刺客達。