双華姫~王の寵姫~
「二度と会えぬ君に何を届けよう。



二度と聞けぬ声に何を思おう。




二度と伝えられない妾の気持ちを梅よ運んでくりゃさんせ…




二度と会えぬ定めに逆らえぬ。妾を許してくりゃさんせ…




梅よ…梅の花たちよ…彼に幸せ届けておくれ…





会いたい…会いたい…会いたい…」




最後は歌詞もつかず、ずっと会いたいを繰り返している。





自分が決めた道だと那智は分かっている。




この辛い道は自分が選んだ道。納得した道…なのに涙は次から次へと溢れてくる。



会いたい…会いたい…会いたい…あの人の下に帰りたい。



紡がれる歌は悲しい恋の歌。後宮に入ると決め別れた初恋の人。




将来を約束していた去年の今頃。続くと思っていた幸せはあっけなく王の一言によって奪われた。





父は王からその話が出た時反対してくれた。



しかし馬鹿な親戚達によって決定されてしまったのだ。




最近有栖川の家からは王の妃は出ていない。



いくら有栖川が第一の位にあるとは言え、親戚達はその権威が衰える事を恐れたのだ。




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