双華姫~王の寵姫~
頭が痛くなってくる。



そして幼い頃那智や柚那と遊んでいるたびに自分たちに釘を刺しに来ていた有栖川家当主を思い出す。





親子の愛が薄いと言われる華族の中で、有栖川本家の家族は珍しくも仲が良く、絆は強いものだった。




那智や柚那が遊ぶのを、いつも慈愛に満ちた目で見ていたのが記憶の中に強く残っている。




「有栖川当主は昔から姫達の事になると人が変わってしまわれるのです」




幸也が昔を思い出すように話す。




「私事になりますが、昔私たちが那智姫様、柚那姫様と遊んでいた時姫達が転んだことがあったのです・・・」




苦笑いの幸也の顔を見れば、何が起きたのかは想像がつくが、王は何も言わず続きを待った。




「その時の有栖川当主の慌てようと言ったら・・・ただのかすり傷に医師が10名、その後一週間は絶対安静の面会謝絶でした・・・」





王からも、幸也からも乾いた笑いが漏れる。親バカと言うのは本当にいたのだと王はこの時に、幸也はあの時知った。




「そんな有栖川当主です。文で済んでいるうちはありがたいと思っていた方が・・・その内自分がくると言い出しますよ」



簡単に想像できる未来に王は一瞬背中が寒くなるのを感じた。




「しかし・・・有栖川の姫が何も訴えてこない以上、思ってだった事はできぬ」




一貫して変わらない王の意見に幸也は溜息をつく。




「那智姫様は何も言わないでしょう。・・・昔から慣れているのです」




何にとは聞かない。自分も彼女も同じ忌み子・・・いくら当主が守っていたとは言え、馬鹿な親戚や臣下はどこにでもいるものだ。
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