双華姫~王の寵姫~
案内された席に座りながら周りを見れば、とりあえず怪しい物はなかった。



真っ昼間から毒を仕込んでくる事はないだろうと思ったが、一応毒消しも飲んでき。この状態なら大事にはいたらないだろう。




那智が一通りの観察を終え紗里達を見ると、紗里達もまた那智を見ていた。目だけ笑っていない笑顔はとても怖い。




「那智姫様は本当に綺麗ですね」




「本当に。何故主上が那智姫様の下に通わないのか不思議で仕方ないですわ」




「そうですわね。私の所には週一回は訪れてくれますのに…」




私の所にもですわ。と相槌を打ちながら、那智を全く加えようとしない空気が紗里達からは出ている。





「そう言えば…通ってはいないはずなのに主上は那智姫様の事をよくご存知なのですね」





紗里の大きな目が細くなる。言われた言葉に覚えのない那智は思わず「どういう事でしょう?」と返す。




「那智姫様の下には大量な贈り物が届くらしいですわね」




その一言で那智には紗里の言いたい事が理解できた。



「私達が後宮に入った時にもたくさんありましたのよ」



ほほほ。と笑う彼女達は自分の顔を一度鏡で見た方が良いだろう。




「それくらい後宮ではよくあること。一々主上の手を煩わせるのは感心しませんことよ?」


あざ笑うようにこちらを見る紗里達を、女って怖いなと他人事のように那智は眺める。



「主上に訴えるなど恥ずかしい事なのですよ」



自分の事は棚上げの紗里は取り巻きもいる為か攻撃的だ。




位でいったら那智の方が高いのだが…忌み子という事もあり馬鹿にされているのだろう。


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