双華姫~王の寵姫~
何も言わない那智に痺れを切らしたのか、紗里が声を荒げる。




「何かおっしゃったら?それとも那智姫様は私達のような者とはお話になりたくないのかしら?」





最初にきちんとした挨拶しただろう!と突っ込めれば気持ちは良いのだが、空気を読める那智はしない。



そもそも突っ込めるくらいなら、始めからここには来ていないだろう。





「その様な事はございません。ただビックリしてしまいまして…以後主上には迷惑をかけないよう気をつけますわ」




迷惑どころか相談すらされていない主上が聞いたらビックリだろう。




「気をつけてくださりませ。それにしても那智姫様も主上に会っているなら教えて下されば良いのに」




そうですわ。取り巻き達の声もここぞとばかりに大きくなる。




会っていない那智は素直に会っていないと伝えたいのだが…空気がそれを許さない。




「それは…」




那智が口ごもっていると紗里達は更に畳みかけてくる。




「言ってくだされば色々と相談などもできましたのに」




相談という名のつるし上げのような気もするのだが…那智は覚悟を決めた。





「主上は私の所にきてませんわ。恐らく有栖川の父から主上に文が行ったのでしょう」


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