双華姫~王の寵姫~
那智の言葉を信じるとは思っていなかったが…案の定怒涛の口撃がやってくる。




「そんなお隠しにならなくても…」




「そうですわ。後宮に暮らす者同士仲良くしましょう」




「主上が訪れるのは当然の事ですもの。お話になって」




と延々と紗里達は畳みかけてくる。




那智は心底部屋に帰りたかった。




本当の事を言っても信じてもらえない。そうなったら那智にはどうする事もできない。




那智が部屋に戻る為の言い訳と、一応本当に来ていないのだと訴える為の言葉を探していると…




その場に入るはずのない者の声が聞こえた。




「ほう。余は有栖川の姫の下に通った事は一度もないはずだが?」






一斉に振り向けば、相変わらず整った顔に、相変わらずのふてぶてしい顔をした王が立っていた。
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